2006年06月21日

村上龍×伊藤穣一「「個」を見つめるダイアローグ」

「個」を見つめるダイアローグ.jpg
「個」を見つめるダイアローグ
村上龍×伊藤穣一
ダイヤモンド社(2006年)

村上龍は僕の最も敬愛する作家です。

それほど他の文学は読んでいませんが、村上文学が自分にとって最も面白く、刺激を受け、学びの多い作品群であることは間違いありません。

また、彼の警世的発言から汲み取れる日本を愛してやまない気持ちや、その目の付け所には大いに刺激を受けます。

伊藤穣一氏も友人がネオテニーで働いていた頃に彼から話を聞いたり、メディアを通してその活躍を目にしていました。

というわけで、この対談はそのタイトルも含め、ボクにとっては非常に刺激的で、楽しみでしょうがない一冊であったわけです。

などと書くと、「あ、イマイチだったんだ」と勘づかれてしまうと思いますが、多分、結論から言うとそう感じてしまったのだと思います。

もちろん、悪い作品ではまったくないのですが、おそらく、「新たな刺激」「斬新な村上節」を期待していたために、ほとんどが「想定の範囲内」だったということで多少残念な気持ちを抱いてしまったのでしょう。彼の作品やJMMをよく読んでいる人には物足りないのではないでしょうか。

また、特にメディア論やIT、ウェブに関する議論は非常に浅いもので、後で紹介しますが、梅田望夫氏の『ウェブ進化論』などと比べると、本書の該当箇所には何も新しい視点も斬新な切り口もなく、見劣りしてしまいます。

というわけで、まだ村上作品群にあまり触れたことのない人にだけオススメします。


posted by ほっしー at 13:22| Comment(25) | TrackBack(0) | その他読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月20日

大鹿靖明「ヒルズ黙示録」

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ヒルズ黙示録 -検証・ライブドア
大鹿靖明
朝日新聞社(2006)

快著です。同級生の直樹氏から薦められたものですが、最近読んだ本の中でも最も知的興奮を覚えるものでした。本文中、何人か友人の名前も実名で掲げられていて、そういった意味でもドキドキしました。

「検証・ライブドア」とはありますが、ライブドアだけが焦点ではありません。ライブドア以前からニッポン放送を狙っていた村上ファンドの動向から、ライブドア・フジテレビの戦い、楽天・TBSの戦い、その裏面で暗躍する村上ファンド、ホリエモンの選挙戦、ライブドアの「自社株食い」のスキーム、地検特捜部による「国策捜査」的な側面、等々、一連の騒動とその実情、implicationを圧倒的な事実に基づく迫力で描いています。

正直、朝日新聞は最も嫌いな新聞の一つなのですが、大鹿記者のジャーナリストとしての気概と筆力には脱帽です。鹿内氏の優柔不断さ、村上世彰代表の人となり、かつての高い志、ホリエモンの無邪気な選挙戦と純粋な宇宙への思い、三木谷社長の意外な及び腰など、主役達の人間的な側面にも濃厚に触れることが出来ます。

いくつか印象的だった言葉を引用します。
グッと来た人は是非手に取ってみて下さい。

ニッポン放送騒動で連結売上高の二年分に当たる1440億円をフジテレビからせしめ、プロ野球参入、ニッポン放送買収、総選挙出馬で名声の高まった彼らは、正気を失っていた。堀江がアクセルを踏み、宮内がブレーキを踏んだかつてのライブドアのガバナンスは完全に失われ、二人がそれぞれ別方向に向かって思い切りアクセルを踏み込んでいた。社内にもはや誰も止める者はいなかった。生き急ぐように突進する様子に、心ある幹部たちは自分たちのそう遠くない破局を予想していた。

時間外取引にMSCB、そしてTOB期間中で相手が身動きできないタイミングでの失念株の奪取という敵対的買収策。技巧を凝らした戦術がせいぜい二週間程度で、しかも、二〇歳代のたった二人で編み出されていった。防衛網を突破され、落城の瀬戸際に立たされたニッポン放送をはじめ、フジサンケイグループ各社に驚天動地の衝撃を与え、日本中を釘付けにした。「ボクらはハッカーみたいなもんですよ。セキュリティホールが甘かった国防総省に忍び込んだハッカーを捕まえてみたら、子供だった。そんな感じじゃないかな」塩野はこのときの様子を、そう例えている。

村上には、あざとく立ち回り、巧みに利益を追求する、したたかなファンドマネジャーの顔がある反面、株主への還元やコーポレート・ガバナンスなどを訴えるオピニオン・リーダーとしての「正義」の顔ももっている。その二面性は、前と後ろに二つの顔を有し、光と闇、善と悪などあらゆる対立物を象徴する古代ローマの神・ヤヌスを思わせる。

ライブドア側についた学者たちの意見書は、ニッポン放送側に回った斯界の権威である学者の著作や論文から、彼らのこれまでの学説を引用しながら、彼らに反論する形をとっていた。これには碩学たちは「侮辱された」と思ったようで、ニッポン放送側に回った江頭や河本は、さらに反論する意見書を提出。意見書の提出合戦は、さながら「師弟対決」「世代間対立」の様相を帯びていた。まるで『白い巨塔』を思わせる徒弟社会が色濃く残る法学界では、弟子や門人からの批判はかなり異例のことだったようで、後々「人間関係がぎくしゃくした」と証言する学者もいる。

その席上で、奥田は「これは世代間抗争だね。応援しているからがんばってください」と堀江を激励し、日枝との仲裁も快諾。日枝に向けて電話をかけ、堀江との話し合い解決に応じるよう求めている。もっとも、奥田の一貫した堀江寄りの言動に不満を感じていた日枝は取り合わず、奥田の仲裁も実は実を結ばなかったのだが。堀江にとって奥田は財界人で唯一火中の栗を拾う労をとってくれた恩人だった。一方の奥田は、国際競争にさらされるトヨタとちがって、狭い国内市場で既得権益に胡座をかくメディア経営者に内心呆れていた、と思われる。奥田は、堀江のワンパク坊主ぶりを買い、この後ライブドアの経団連入りを強力に後押しすることになる。

東京地検と証券取引等監視委員会発と見られる報道内容も、実は永田の偽メール並の怪情報が多かった。クレディ・スイスを使った国際的な資金移動を見つけて、マネーロンダリングや脱税を疑ったが、これまで見てきたように、そうした形跡はほとんど見られない。捜査当局は3月10日ごろには「白」という心証を得たようだが、事件を大きく見せるために、恣意的なリークで世論操作をしてきた可能性がある。3月半ばをすぎてもクレディの関与を疑惑視した報道が続いたことに、事情聴取に全面的に協力してきたクレディ関係者は「これ以上、意図的なリーク記事が氾濫する場合は、スイス本国と日本政府との間で外交問題に発展する可能性がある」と警告している。
posted by ほっしー at 13:01| Comment(10) | TrackBack(5) | 時事・ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Galli's Piano Bar

火曜の夜は以前「久しぶりのジャズ」記事で登場した神戸大の先生+日本人学生sでRancho Cucamongaというクレアモントの隣隣町にあるGalli's Piano Barへ行ってきました。

カレンダーによるとジャズなのかどうかよく分らなかったのですが、音楽なら(ほぼ)なんでもありな僕は相当楽しみにして行ってきました。結論から言うとなかなかよかったです。卒業までの間も多分ちょこちょこ通うだろうなという予感がします。相当食べて一人21ドルだったのでコストパフォーマンスもなかなか。店の雰囲気も、安っぽい外見(郊外型都市に腐るほどある小さなモールのなかに位置)とは裏腹に、中はかなり落ち着いたいい感じでした。

1人目はガタイのいいお兄さんで、ピアノもギターもヴォーカルもこなせる人でした。ジャズではなくてポップス。最初自分でサウンドのセッティングをしてたので、てっきり店のスタッフかと思ったらパフォーマーでした。声がかなりよくて、エルトン・ジョンみたいな感じでかっこよかったですね。

Galli1
Galli1 posted from フォト蔵

リクエストもできるのですが、クラプトンのTears in Heavenを頼んだところ、相当がっかり。いや、うまいのですが、独自のアレンジを加えすぎていて、原曲の跡はほとんどとどめていなくて、あの美しいサビも台無しでした。別の曲として聴けばそれはそれでよかったのかもしれないですが。

後ほどエアロのDon't Wanna Miss a Thingを独自のアコースティック・バージョンで歌っていましたが、これも何となく、それはそれでいいのだけれど、原曲の良さは消えてるような感じで、少しがっかり。

と書くとロクでもない独り善がりアーティストか、と思われてしまうかもしれませんが、それ以外はすごくよかったのですよ。ほんとに。

そして、彼に代わって、3曲だけやったのが男女のユニット。ボロボロのジーンズ&Tシャツにレスポールタイプのギターというなかなか渋い見た目のギター(男)に、インド系かヒスパニック系か区別がつきかねるがなかなか美人なヴォーカル(女)の二人でした。誰かのカバー1曲と、自分たちのオリジナル2曲を聴かせてくれましたが、ギター&彼のバックコーラスはさておき、ヴォーカルはなかなか素晴しかった。声質はシェリル・クロウっぽく、高音でかすれるところが非常にセクシーでいい感じでした。

Galli3
Galli3 posted from フォト蔵

Galli2
Galli2 posted from フォト蔵

まあ、一番よかったのは、ヴォーカルのソフィアちゃんが、"I want you..."という歌詞のところでこっちをじーっと見ながら笑顔でにっこりウィンクしてくれたことですな(笑)一番前の席で熱心に聴いていたのでご褒美をくれたのでしょう。ファンをつくるのがうまいっすね(笑)
posted by ほっしー at 04:33| Comment(1) | TrackBack(0) | アメリカ生活・旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月19日

HBRアンソロジー「動機づける力」

動機づける力.jpg
動機づける力("How to Get the Most from Your Organization")
Harvard Business Review Anthology
ダイヤモンド社(2005年)

既にいくつかご紹介した論文も含まれますが、なかなか粒よりのよい論文集でした。テーマはモチベーションで、相当古いものから最近のものまで、幅広く集められています。なかなかお買い得なのではないでしょうか。

以下、特に印象に残ったものをいくつかご紹介します。

第1章 モチベーションとは何か
詳しくは既に「社員に発電機を組み込む」でご紹介しましたが、「モチベーションとは何か」とそもそも論を考えてみる上で非常に参考になります。また、衛生要因と動機づけ要因という段階的なアプローチも実践的で分かりやすいです。

第2章 ピグマリオン・マネジメント
これも既にご紹介したものです。上司の「期待」が果たす役割、そして「適切な」期待を持つために考えなければならないこと、について非常に興味深い論考がなされています。

第5章 フェア・プロセス
ブルー・オーシャン戦略」のキム教授(INSEAD)の主要な研究成果の一つで、いかに公平なプロセスで変革を進め、社員の信頼を得ていくことが重要であるかという議論です。もちろん、「公平」であるために外せないいくつかのポイントも示されています。紹介されているケースも興味深いものです。

第7章 正しい苦言の呈し方
どうすれば感情的対立や衝突に至ることなく、効果的に部下に対するネガティブなフィードバックを行えるか、について論じられています。筆者によれば、そのような失敗に終わる大きな理由は、フィードバックに臨む上司の思考の枠組が偏狭で、固定的になってしまっていることにあるようです。

第8章 ストーリーテリングが人を動かす
これも多分旧ブログの方で記事を書いたような気もしますが、モチベーションに限らず、すべてのプレゼンテーション、説得のプロセスにおいて、人々の感情に訴える物語を語ることが最も重要であるということ、及び、良い物語を語るために必要な原則について論じられています。
posted by ほっしー at 15:01| Comment(1) | TrackBack(0) | LD2: 人・組織を動かす力 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月18日

ノートン・サイモン美術館

日曜日はパサディナのノートン・サイモン美術館へ行ってきました。地球の歩き方によれば、「全米屈指の美術館」、「コレクションの充実度は、ゲッティセンターと並んでL.A.にある美術館の双璧といえる」だそうです。

元々は、朝からSanta Monica Mountainsにあるハイキングコースの一つを散策して、その近くのゲッティセンターへ行くという相当充実した計画を立てていたのですが、朝5時半に起きて日本人学生sで日本戦を応援した後、昼前まで寝てしまい、あえなく撤回となりました。来週リベンジです。

で、近場のノートン・サイモンへ行ったのですが、なかなかよかったです。写真を大量に撮ってきたのでご紹介しましょう。館内、フラッシュさえ焚かなければいくらでも写真撮っていいそうです。

ノートン・サイモン1
ノートン・サイモン1 posted from フォト蔵
駐車場脇の写真です。あまり自己主張が強くなく、品のいい佇まいになっており、感じがよいです。

ノートン・サイモン2
ノートン・サイモン2 posted from フォト蔵
エントランスへ向かう道にはたくさんの彫刻があります。彼らは何かを嘆いてようです。僕にはこう聞こえました。「日本の決勝進出はこれでほぼ消えたよな。。。」

ノートン・サイモン3
ノートン・サイモン3 posted from フォト蔵
入ってすぐのところにある美しい石仏像。煽りのアングルで撮ってるので高圧的に見えますが、実際はそんなことありません。非常に穏やかで、温かい雰囲気に満ちています。

ノートン・サイモン5
ノートン・サイモン5 posted from フォト蔵
庭園もなかなかいいんです。真ん中に池があり、周りをぐるっと緑の小径に囲まれていて、たくさんの彫刻、オブジェが配されています。

ノートン・サイモン4
ノートン・サイモン4 posted from フォト蔵
花もきれいでしたね。

ノートン・サイモン6
ノートン・サイモン6 posted from フォト蔵
ご婦人を後ろからこそっと激写してみました。

ノートン・サイモン7
ノートン・サイモン7 posted from フォト蔵
そしたらチータみたいな動物に見られてました。。。

ノートン・サイモン8
ノートン・サイモン8 posted from フォト蔵
「フムフム。地球人ノ男モショウモナイデスナア」
火星人?

ノートン・サイモン9
ノートン・サイモン9 posted from フォト蔵
こっちは何星人!?

ノートン・サイモン10
ノートン・サイモン10 posted from フォト蔵
かなりぼやけてて分かりにくいですが、この家族のブロンズ像は顔が相当面白いです。四コママンガに出てきそうな超困った顔。

ノートン・サイモン11
ノートン・サイモン11 posted from フォト蔵
馬のオブジェもたくさんありましたが、これが一番きれいでした。

今回一番印象的だったのが、特設会場でやっている、レンブラントのエッチング展でした。油彩画ももちろん綺麗ですが、エッチングの原画は彼の魂というか気迫みたいなものが直接伝わってくるようで、相当感動しました。9月11日までやっているようですので、興味のある方は是非どうぞ。

ちなみに、地下一階にかなり充実した東洋美術のコレクションがあるのですが、、、なんと、寮の部屋に貼るポスターをゆっくり時間かけて選んでたらうっかりそのまま帰ってしまいました(笑)また今度もう一回行かなければ。
posted by ほっしー at 14:34| Comment(0) | TrackBack(0) | アメリカ生活・旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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